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COPD治療薬「ビレーストリ」の勉強会をしました。

2020.01.24

COPD治療薬「ビレーズトリ」の勉強会をしました。

2019年10月2日
by TN@東畦店

〈COPDとは〉
まず初めにCOPDとは、Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)の頭文字を取った名称です。タバコなどの有害物質の吸入によって肺に慢性的に炎症が起き、空気の流れ(気流)が制限される結果、呼吸困難などの症状がみられる病気です。

開発の経緯
慢性閉塞性肺疾患 (慢性気管支炎、肺気腫) (以下、COPD) は世界的に死亡者数が多く、死亡要因の第3位となっており (2016年時点) 、日本でも男性の死亡要因の第8位となっている (2017年時点) 。COPDの治療は気管支拡張薬の吸入が主だが、日本のCOPD患者の平均年齢は72歳1) と高齢であることが報告されており、高齢者は吸気流量が低下しているため、吸入が容易ではないCOPD患者が多く存在している。
また、吸入ステロイド薬 (ICS) 、長時間作用性吸入β2刺激薬 (LABA) 、長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA) を併用する場合、2種類以上の吸入器を使用するCOPD患者も多く、それぞれの吸入手技を習得する必要があった。
ビレーズトリ™エアロスフィア® (以下、ビレーズトリ) は、1吸入当たりICSであるブデソニド160 μg、LABAであるホルモテロールフマル酸塩水和物5.0 μg (ホルモテロールフマル酸塩として4.8 μg) 、LAMAであるグリコピロニウム臭化物9.0 μg (グリコピロニウムとして7.2 μg) を配合した加圧式定量噴霧吸入器 (pMDI) による吸入薬である。pMDIは、努力呼吸を必要としないため、吸気流量の低いCOPD患者でも吸入しやすいとされている吸入器である 。
第III相国際共同臨床試験 (PT010006試験) において、ビレーズトリは、グリコピロニウム/ホルモテロールpMDI、ブデソニド/ホルモテロールpMDIに比べ、主要評価項目である投与12~24週のトラフFEV1値のベースラインからの変化量を有意に増加させた 。
ビレーズトリは、3つの薬剤を多孔性粒子である担体に接着させ、肺全体に送達させる薬剤送達技術を有している。この薬剤を含む担体は、肺の中枢から末梢まで到達するのに適していると考えられている粒子径であること、多孔性で薬剤結晶と比較して比重が軽いことから、薬剤を肺の末梢まで送達することが期待できる。また、多孔性粒子は、肺サーファクタントと同様のリン脂質で構成されているため、肺や気道の表面に沈着しやすいと考えられる。さらに、多孔性粒子は共懸濁液としても機能し、薬剤結晶を沈降しにくくする。

効能又は効果
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解

用法及び用量
通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320 μg、グリコピロニウムとして14.4 μg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6 μg)を1日2回吸入投与する。

(1) 作用部位・作用機序
作用部位:肺・気道

1) ブデソニドの作用機序
ブデソニドは、特有の動態学的特性を示す糖質コルチコイドである。吸入ブデソニドは、主に気道組織内で可逆的脂肪酸エステル化を受けるが、この特性はブデソニドの持続的な局所組織結合及び抗炎症作用に寄与すると考えられる。

2) グリコピロニウムの作用機序
グリコピロニウムは長時間作用性のムスカリン受容体拮抗薬であり、アセチルコリンのM3受容体結合を阻害することにより気管支収縮抑制作用を示す。

3) ホルモテロールの作用機序
ホルモテロールは長時間作用性のβ2受容体刺激薬であり、細胞内環状アデノシン一リン酸 (cAMP) 濃度を増加させることにより、気道平滑筋を弛緩させ、気管支拡張作用を示す。

4) ブデソニド/ホルモテロール/グリコピロニウムの相加的作用
① グリコピロニウム/ホルモテロール
抗コリン薬とβ2刺激薬の間では、抗コリン薬によりM3受容体を介したシグナル経路を抑制することでβ2受容体の活性を増強し、β2刺激薬によりβ2受容体の活性を増強することでM3受容体のシグナル経路に対し抑制的に作用することが推定されている。
② ブデソニド/ホルモテロール
ステロイドとβ2刺激薬の間では、ステロイドによるβ2受容体の発現が促進すること及びβ2刺激薬によるステロイド・受容体複合体の核内移行が促進することが推定されている。
③ ブデソニド/グリコピロニウム
ステロイドと抗コリン薬の間では、cAMP濃度上昇に関連した相加効果を示すことが推定されている。

◎感想
3種類の成分が入っているので今まで複数の吸入薬を吸入していた方は、1回で済むので利便性が増すと思います。
COPDで苦しんでいる患者さんに一つの治療の選択肢が増えた事は喜ばしいことだと思います。

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