「ビムパット錠・ドライシロップ」の勉強会をしました
2020.03.06
《ビムパット錠・ドライシロップの勉強会をしました》
2020年1月27日
By藤田店 N.A.
販売名:ビムパット点滴静注200㎎
ビムパット錠50㎎、100㎎
ビムパットドライシロップ10%
↑2019年3月11日発売新剤形!!水を加えてかき混ぜてから服用。
小児や嚥下機能の低下をよく理解し、のてんかん発作の消失と不している高齢の患者さんなどにも飲みやすい!
一般名:ラコサミド
【作用】
神経細胞の興奮調節(過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させることで、神経細胞の過剰な興奮を抑制)とNa+チャンネルの緩徐な(数秒又はそれ以上の)不活化を促進することで抗てんかん作用を発揮します。
【適応】
てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
【てんかん患者さんの現状について】
日本では約100万人のてんかん患者さんがいると言われ、毎年57000人が新たにてんかんを発症しています。てんかん患者さんの大部分が長期的な薬物療法を必要としますが、既存の抗てんかん薬を使用しても30%を超える患者さんがてんかん発作を十分にコントロールできないとの報告もあります。
また、3歳未満は全般発作、4歳からは部分発作が多いです。そのため、部分発作が適応のビムパットは小児用量が4歳以上からの設定となっています。
【抗てんかん薬の目的と種類】
てんかんは興奮と抑制のバランスが崩れ、興奮が優位になった状態です。
てんかんの治療薬は、てんかん発作の消失+治療による副作用の軽減が目的となります。
治療には興奮を抑制するものと抑制を増強するものがあります。
興奮を抑制するものには下表のように、てんかん部分発作の第一選択薬として推奨されるカルバマゼピンなどのNa+チャネル阻害、イーケプラなどのシナプスに作用するものが存在します。
Na+チャネルの不活化には
→通常の活動電位発生に伴って起こる「急速な不活化」
→てんかんの様な持続的な過剰興奮によって起こる「緩徐な不活化」
の2種が存在します。
「急速な不活化」は活動電位の不応期の調節
「緩徐な不活化」は活動電位発生の閾値を上昇
させます。神経細胞の興奮性はこの2つのNa+チャネルの不活化により調節されています。
標的 | 作用機序 | 抗てんかん薬 |
Na+チャネル阻害 | 急速な不活化を促進 | ヒダントール、テグレトール、ラミクタール、オクノベル、イノベロン |
緩徐な不活化を促進 | ビムパット | |
Ca2+チャネル阻害 | P/Q型Ca2+チャネル | ガバペン |
T型Ca2+チャネル | エピレオプチマル、ザロンチン | |
GABA関連 | GABA受容体活性 | フェノバルビタール
ベンゾジアゼピン類 |
GABA輸送体阻害 | Tigabine | |
GABAトランスアミナーゼ阻害 | ザブリル | |
シナプス小胞タンパク2A結合 | イーケプラ | |
AMPA受容体阻害 | フィコンパ | |
K+チャネル開口作用 | Retigabine/Ezogabine | |
複数の作用機序 | デパケン、トピナ、
エクセグラン、トレリーフ、 Felbamate |
【ビムパットの特徴】
味:甘味がありオレンジの香料が使用。ラコサミド自体に苦味があるので、甘味が若干強めになっている。
投与方法:1日2回
用量:通常、4歳以上の小児にはラコサミドとして1日2mg/kgより投与を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kgずつ増量し、維持用量を体重30kg未満の小児には1日6mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児には1日4mg/kgとする。いずれも1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により体重30kg未満の小児には1日12mg/kg、体重30kg以上50kg未満の小児には1日8mg/kgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として2mg/kg以下ずつ行うこと。ただし、体重50kg以上の小児では、成人と同じ用法・用量を用いること。
とあります。維持用量へは1ヶ月くらいの時間をかけて持って行き様子を見ます。
食事の影響:なし
薬物動態:用量依存的に血中濃度が上昇
Cmax:経口投与後1~4時間
T1/2:13時間
排泄経路:腎
併用:Na+チャネルの緩徐な不活化を選択的促進し、過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させることで、神経細胞の過剰な興奮を抑制し抗てんかん作用を発揮します。そのため、同じくNa+チャネル阻害で急速な不活化を促進する薬剤との併用も可能です。
副作用:傾眠、めまいが用量ステップアップのタイミングで出やすいですが、2~3日で緩和します。てんかんの患者さんは鬱や不安など依存性の疾患を持たれている事が多いですが、ビムパットは精神症状の発現が少ないためこのような患者さんにも使用することが出来ます。
【考察】
てんかんは、根気よく薬物療法を続けなければならないものです。
ビムパットは飲みやすく、また、今までに無い新しい作用機序や精神症状などの副作用が少ない事により、他剤と併用し治療の可能性が広がることが期待できます。患者さんのコンプライアンスの向上や症状の安定のためにも、ビムパットの特徴をよく理解し、処方された患者さんの不安を取り除き、治療の助けになれるようにしたいと思います。