原発性腋窩多汗症治療剤エクロックゲル5%の勉強会をしました
2020.12.21
2020.12.15(火) by MI@妹尾店
原発性腋窩多汗症とは、汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないのにもかかわらず、多量のワキ汗に悩まされる疾患です。従来の原発性腋窩多汗症の治療には、塩化アルミニウムローションやボトックス注射、手術治療やプロバンサインの内服療法等がありました。新たな治療法として、2020年9月25日に日本初の原発性腋窩多汗症治療剤としてエクロックゲル5%が承認され、11月26日に発売されました。
一般名:ソフピロニウム臭化物
効能又は効果:原発性腋窩多汗症
用法及び用量:1日1回、適量を腋窩に塗布する。
薬価:243.70円/g(1本20g:4,874.00円)
シャツに汗染みが出来るなど、日常生活に支障をきたすほど多量のワキ汗が、明らか
な原因がないまま6ヶ月以上みられ、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合を「原発性腋窩多汗症」と診断している。
・最初に症状がでるのが25歳以下であること
・左右両方で同じように発汗がみられること
・睡眠中は発汗が止まっていること
・1週間に1回以上多汗の症状がでること
・家族にも同じ疾患の患者さんがいること
・ワキ汗によって日常生活に支障をきたすこと
多汗症の原因となる汗はエクリン汗腺から分泌される。エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を刺激することにより発汗を誘発すると考えられている。エクロックゲル5%の有効成分であるソフピロニウム臭化物は、M3を介したコリン作動性反応を阻害し、発汗を抑制する。
・1日1回、両腋窩への塗布で効果が期待できる。
・アプリケーターにより薬液に触れずに塗布が可能。
・エクリン汗腺にのみ作用して、アポクリン汗腺とアポエクリン汗腺には作用しない。
・12歳未満を対象とした国内臨床試験は実施していないが、問題なく使えるとのこと。
・24時間効果があるので、起床時と入浴後のどちらのタイミングで使ってもよい。
・発汗重量及び自覚症状の指標であるHDSSが、基準群と比較して有意改善した。
HDSS (16歳以上)
スコア | 自覚症状 |
1 | 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。 |
2 | 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。 |
3 | 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。 |
4 | 発汗が我慢できず、日常生活に常に支障がある。 |
副作用発現頻度は16.3%で、主な副作用は適用部位皮膚炎が6.4%、適用部位紅斑が5.7%、適用部位掻痒感が2.1%だった。
抗コリン作用があるため、下記の患者には禁忌となる。
・閉塞隅角緑内障の患者(眼圧が上昇して症状を悪化させることがある。)
・前立腺肥大による排尿障害がある患者(尿閉を誘発することがある。)
・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
・本剤が眼に入った場合、抗コリン作用による散瞳等が発現することがある。
また刺激を感じることがあるので、万一眼に入った場合は直ちに水で洗い流すこと。
・ボトルに充填された本剤をポンプでアプリケーターに吐出させて使用する。
手に直接吐出させて塗布しない。手に付着した場合は直ちに手を洗うこと。
・各腋窩あたりポンプ1押し分とすること。
・薬が乾くまで、寝具や衣類に触れないようにすること。
今までの原発性腋窩多汗症の治療の塩化アルミニウムローションは保険で処方することができず、ボトックス注射は治療費が比較的高額であり、注射による痛みに問題がありました。また手術治療やプロバンサインの内服療法等は、患者さんへの負担や、全身性の副作用が発症する可能性がありました。
今回のエクロックゲル5%は、薬価がさほど高くなく、全身性の副作用の少ない外用剤であることから、今までワキ汗で悩んでいた方々にとって期待できる薬剤なのではないでしょうか。このような薬が今までなかったのが不思議な気がしました。
そして腋臭(わきが)で悩む方のために、アポクリン汗腺やアポエクリン汗腺にも作用する薬もできればいいなと思いました。