バフセオの勉強会をしました
2021.09.27
バフセオの勉強会をしました
令和3年9月14日 @はな薬局東畦店 MH
HIF-PH阻害剤―腎性貧血治療剤―
バフセオ錠 150mg・300mg
成分:バダデュスタット
腎性貧血とは
腎機能が悪化すると腎臓より分泌される赤血球を造る働きを促進する、エリスロポエチンというホルモンの
分泌が減り赤血球を造る機能が低下することでおこる貧血のことです。
治療の目標はヘモグロビン値11~13g/dl。
治療は不足しているエリスロポエチンを補う必要があります。透析を行っていない患者は、赤血球造血刺激因子
製剤(ESA製剤:ミルセラ・ネスプなど)を2~4週間ごとに皮下投与します。
内服薬ではエベレンゾ(バダデュスタット)が先に承認されていましたが、適応症が透析患者に限定されて
いました。バフセオは透析に至る前の患者にも使用できます。
作用機序
HIF-PHを不活性化し、HIF-αの水酸化及び分解を抑制する。HIF-αは核内に移行し、ヘテロダイマーを形成
する。核内で遺伝子の転写領域に結合してエリスロポエチンの合成を促す。エリスロポエチンが産生されて
赤血球が造られる。
HIF(Hypoxia Inducible Factor:低酸素誘導因子)
低酸素状態に対する生体の適応反応において、重要な遺伝子を制御する転写因子です。
HIF-αの量は、細胞内の酸素分圧に応じて、HIF-PH(プロリン水酸化酵素)による制御を受けています。
低酸素状態に傾くと、HIF-αの分解が妨げられ、エリスロポエチンの遺伝子発現に影響を与えます。
HIF-PH(プロリン水酸化酵素)
細胞内の酵素分圧に応じ、HIF-αを水酸化して分解に導きます。
低酸素状態に傾くと、活性が低下します。
ESA製剤との比較(ダルベポエチン)
臨床成績:ESA未治療の患者において、バフセオ群及びダルベポエチン群のHb値の平均値は24週後まで
同等に推移しています。ダルベポエチンの方が少し4週からの上昇が大きくなっていますが、24週にはほぼ
同じ数値になっています。Hb値が目標範囲内の患者割合は8~20週の間は、ダルベポエチン群の方が目標
範囲越えの割合が多くなっていますが、24週では同じ割合になっています。
ESAで治療されていた患者においてはHb値の平均値同等に推移していて、ずっとダルベポエチン群の方が
少し数値は高めです。
Hb値が目標範囲内の患者の割合は24週後で、バフセオ群では66.7%、ダルベポエチン群では82.7%でした。
安全性:治療期間(52週間)終了時の副作用の発現割合は、バフセオ群13.2%、ダルベポエチン群4.6%
であり、主な副作用はバフセオ群で下痢6例(4%)悪心3例(2%)腹部不快感2例(1.3%)
ダルベポエチン群で高血圧2例(1.3%)でした。死亡を含む重篤な副作用は両群において認められません
でした。中止に至った副作用はバフセオ群の腹部不快感及び倦怠感が1例(0.7%、同一患者)、網膜出血、
胃炎、下痢が各1例(0.7%)に認められました。
投与方法:ESAは注射で病院に通院が必要で、バフセオは経口にて自宅で内服可能です
特に注意が必要な副作用
血栓塞栓症:ヘモグロビン値の上昇に伴い血液の粘ちょう度が増すことで、血栓塞栓症の発症リスク増加に
つながることが報告されています。バフセオ投与中に脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓等の血栓塞栓症があらわれ
死亡に至る恐れがあります。
その他の副作用
肝機能障害:バフセオ投与中に肝機能障害があらわれることがあります。
注意が必要な疾患
脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓:血栓塞栓症を増悪あるいは誘発する恐れがあります。
高血圧症:血圧上昇するおそれがあります。
悪性腫瘍を合併:血管新生促進作用により悪性腫瘍を増悪させることがあります。
増殖糖尿病網膜症・黄斑浮腫・滲出性加齢黄斑変性症・網膜静脈閉塞症:血管新生促進作用により網膜出血が
現れる可能性があります。
相互作用
多価陽イオンを含有する経口薬剤(カルシウム・鉄・マグネシウム・アルミニウム等)
バフセオとこれらの薬剤がキレートを形成し、バフセオの作用が減弱する恐れがあります。併用する場合は
バフセオ服用前後2時間以上あけて服用するように指導する。
プロベネシド
バフセオとの併用により、プロベネシドのOAT1及びOAT3阻害作用によってバフセオの血漿中濃度が
上昇し、バフセオの作用が増強する恐れがあります。
BCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン・シンバスタチン・アトルバスタチン・サラゾスルファピリジン)
バフセオとの併用により、バフセオのBCRP阻害作用によって、BCRPの基質となるこれらの薬剤の血漿中
濃度が上昇し、これらの薬剤の作用が増強する恐れがあります。
OAT3の基質となる薬剤(フロセミド・メトトレキサート)
バフセオとの併用により、バフセオのOAT3阻害作用によって、OAT3の基質となるこれらの薬剤の血漿中
濃度が上昇し、これらの薬剤の作用を増強する作用があります。
用法用量
1回300㎎を開始用量とし、1日1回経口投与、以後は患者の状態に応じて投与量を適増減できますが、最高用量は1日1回600㎎までになります。
増減幅は150㎎とし増量の間隔は4週間以上あける。休薬した場合は1段階低い要領で投与を開始。
投与の注意点
・ヘモグロビン濃度が目標範囲で安定するまで2週に1回程度はヘモグロビン濃度を確認。
・投与中は4週に1回程度ヘモグロビン濃度を確認。
・ヘモグロビン濃度が4週間以内に2.0g/dlを超えるような急激な上昇がみられた場合は速やかに減量または
休薬する等適切な処置を行う。
・透析患者において、赤血球造血刺激因子製剤からバフセオへの切り替え後にヘモグロビン濃度が低下する傾向が認められているため、切り替え後のヘモグロビン濃度の低下に注意する。
・定期的に肝機能検査をする。
・血圧の推移に十分注意。
・造血には鉄が必要であるため鉄欠乏時には鉄剤を投与する。
他のHIF―PH阻害剤との比較
他の製剤と作用機序は同じです。
バフセオとエナロイはESA製剤の使用の有無にかかわらず初期投与量が同じです。エベレンゾとダーブロックはESA製剤の使用の有無により初期量がことなります。エベレンゾは週3回の服用でそのほかは1日1回の服用となります。
現在はすべて長期処方が可能で通院頻度の減少、注射でないための患者負担の軽減がメリットと考えられます。薬価については内服は初期量も違うため違いはありますが、効果の違いもあるため一概に高い安いとは言えないです。注射剤との薬価の比較は注射の後発品があるので後発と比べると高めになります。
腎性貧血の内服薬が出来たことにより、エリスロポエチン製剤では効果不十分だった患者さんや、注射が負担になる患者さんに対して有力な治療の選択肢が出来、患者さんの選択肢が増えることが期待できます。
長期処方も可能になっているので今後内服薬に切り替え、内服薬から開始されることが増えていくと
思われます。
投薬時には、治療の重要性・副作用・併用に関しての注意など患者さんに理解していただけるように丁寧に説明
できるように心がけていきたいです。