「エンレスト錠」の勉強会をしました
2021.01.18
2021年1月15日
《エンレスト錠の勉強会をしました。》
2020年9月29日実施
By W.S @妹尾店
◎販売名:エンレスト錠50㎎
100㎎
200㎎
◎成分名:サクビトリルバルサルタン(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
◎効能・効果:既に治療を受けている方用の慢性心不全治療薬
【そもそも慢性心不全とはどのようなものでしょうか??】
心臓の病気により全身に血液を送り出す心臓のポンプの機能が低下し、
身体が十分な血液を受け取れず、さまざまな影響を及ぼす状態のこと。
この状態が長期的続き、心臓の機能が落ちることを慢性心不全という。
◎特徴:一剤で2種類の薬理作用をもつ。
体内でサクビトリルとバルサルタンに解離して、サクビトリルによるネプリライシン(NEP)阻害作用
およびバルサルタンによるアンジオテンシIIタイプ1(AT1)受容体拮抗作用の2つの作用を発揮する。
◎作用:特徴でも示したが、サクビトリル/バルサルタンがそれぞれの下記の作用をもつ。
生体内には利尿作用や血管拡張作用を有するホルモンとしてナトリウム利尿ペプチドが
存在しているが、これはネプリライシンという酵素によって分解されてしまう。
・ナトリウム利尿ペプチドの利尿作用や血管拡張作用を通して、
体液量を減らすことができれば心負荷を軽減できる。
それを分解するネプリライシンという酵素を阻害すれば
生体内のナトリウム利尿ペプチドは増加していく。(サクビトリルの作用)
・体内の血圧上昇や心筋の肥大化などに関わるアンジオテンシンIIという物質があり、
アンジオテンシンIIはアンジオテンシン受容体(AT受容体)に結合することで
その生理作用をあらわす。その結合を阻害することにより、アンジオテンシンIIの
働きを抑え心肥大化や繊維化の抑制作用をあらわす。
上記2作用をまとめたものを以下に添付しておきます。(日経BPより抜粋)
◎用法・用量: 通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回
経口投与する。その後問題がない場合は2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。
1回投与量は50mg、100mg又は200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。
◎用法・用量の注意点:50mg錠と100mg錠又は200mg錠の生物学的同等性は
示されていないため、100mg以上の用量を投与する際には50mg 錠を使用しないこと。
(エンレスト100㎎ 1.5錠は疑義照会をして100㎎1錠+50㎎1錠はダメ。
あくまで100㎎1錠と100㎎半錠で渡さなければならない。)
◎副作用:低血圧が一番多い。その他は高カリウム血症や血管浮腫、腎機能不全など。
◎考察
いい状態と悪い状態を繰り返していきながら経過していくものが心不全というものだから、
食生活等の原因を改善しながら服薬をするという日々を長いこと続けていく必要があると思います。
息切れや浮腫み、体重増加から異常を感じ診察にて心機能の低下(心不全)と診断が下ることも多い
と思います。
ペースメーカーを入れたり、制限がきつい心臓移植等の負担が大きい治療法がある一方、
比較的負担の少ない薬物治療が大部分の患者さんに用いられる治療法かもしれません。
ただ薬物治療では、患者さんのコンプライアンス/アドヒアランスに因り結果が左右されることが
大きいと思います。もしくはきちんと服用されている方においても、現状の薬では期待通りの効果が
得られていないかもしれません。
このエンレストは2方向から心不全にアプローチできる今までとは機序の異なる薬なので
明るい未来を患者さんに提供できるのかもしれません。