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外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤          コレクチム軟膏0.5%の勉強会をしました

2020.12.22

《外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤コレクチム軟膏0.5%の勉強会をしました》

                                            2020.10.23
                                         by MI@妹尾店
 
コレクチム軟膏は、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすJAKの働きを阻害し、免疫反応の
過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善する、非ステロイド性の世界初の外用JAK阻害剤です。
1999年にプロトピック軟膏が発売されて以来、約20年ぶりに発売されたアトピー性皮膚炎に対する新しい
外用薬となります。
 
製品名 コレクチム軟膏0.5%
一般名 デルゴシチニブ
効能・効果 アトピー性皮膚炎(軽症から重症まで)
 
☆アトピー性皮膚炎とは?
痒みを伴い慢性的に経過する皮膚炎(湿疹)。その根本には皮膚の生理学的異常(皮膚の乾燥とバリアー機能
異常)があり、そこへ様々な刺激やアレルギー反応が加わって発症すると考えられている。
 
☆アトピー性皮膚炎の原因
明確な発症原因は不明確だが、家族歴、既往歴、外的要因、環境要因(ストレス、食生活、肥満など)が考えられる。これらの様々な原因によって、マクロファージやTh2(ヘルパーT細胞の一種)からTNFα、IL-4、IL-6、IL-13、IL-22などのサイトカインや化学伝達物質が放出され、これが作用することで痒みを誘発すると考えられている。
 
☆アトピー性皮膚炎の進行
ヤヌスキナーゼ(JAK)はサイトカイン受容体に会合するチロシンキナーゼで、JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2の
4種類がある。サイトカインが受容体に結合し、JAKがリン酸化され活性型になる。活性化したJAKは近傍の
STATをリン酸化する。リン酸化されたSTATは核に移動し、遺伝子発現を調節する。
JAK/STAT経路は、アトピー性皮膚炎の病態形成にかかわる種々のサイトカインと成長因子のシグナル伝達に
かかわり、特に免疫調節、皮膚のバリア機能低下にかかわっている。
 
☆コレクチム軟膏の作用機序
コレクチム軟膏の有効成分であるデルゴシチニブは、ヤヌスキナーゼファミリー(JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2)のすべてのキナーゼ活性を阻害することにより、種々のサイトカインシグナル伝達を阻害する。
この作用機序に基づき、サイトカインにより誘発される「免疫細胞」及び「炎症細胞」の活性化を抑制して皮膚の炎症を抑制する。
また、サイトカインにより誘発される皮膚バリア機能関連分子の発現低下及び掻破行動(そう痒)を抑制する。
 
☆用法・用量
通常、成人(16歳以上)には、1日2回、適量を患部に塗布する。(1回最大5gまで)
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
 
☆使用上の注意
プロトピック軟膏よりも刺激が少なく、分子量が小さいので顔以外でも吸収が悪くない。
しかし、容易に経皮吸収されるので、規定の用法・用量を超えて使用した場合、血中濃度が経口投与並に高くなる可能性がある。
びらん面では吸収が増加するため、明らかなびらん面には塗布しない。
粘膜も吸収が高いため塗布しない。
治療開始4週間以内に皮疹の改善が認められない場合は、使用を中止すること。
症状が改善した場合には継続投与の必要性について検討し、漫然と長期にわたって使用しないこと。
 
☆副作用
作用機序から皮膚感染症のリスクが高まることが予想される。
カポジ水痘様発疹、適用部位ざ瘡、適用部位発疹、適用部位毛包炎、ざ瘡様皮膚炎など。
 
☆薬価
139.7円/g
ステロイドの外用薬やプロトピック軟膏に比べてかなり割高。
 
☆まとめと考察
アトピー性皮膚炎の治療に、ステロイド外用薬、プロトピック軟膏についで第3の選択肢ができたことは、治療の幅が広がって良かったなと思いました。特に、刺激があってプロトピック軟膏が使えなかった患者さんには、ステロイド以外の軟膏ということで期待できるのではないでしょうか。
しかし、小児への適応が今のところないのは残念です。使えるようになることを期待します。
また、頻度は少ないのかもしれませんが、副作用にも注意が必要なのかなと思いました。
今後、ステロイド外用薬やプロトピック軟膏との併用で、さらに治療効果が上がることを期待したいと思います。

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