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ケレンディアの勉強会

2023.08.02

「ケレンディア」の勉強会をしました。                         2023年7月21日

                                        by TN@東畦店

 

開発の経緯

 ケレンディア錠(一般名:フィネレノン)はBayer社で創製された新規の非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド 受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)である。フィネレノンは、化学構造中にステロイド 骨格を有さず、選択的にミネラルコルチコイド受容体(MR)に結合することで、MRの過剰活性化を抑制する。 MRは主に腎尿細管上皮細胞において電解質の貯留・排泄や体液量の調整を司ることが知られている。しかし近年、MRは 尿細管以外の腎糸球体、心臓、血管等全身に広く発現していること、さらにその過剰発現・活性化が炎症及び線維化等を 直接惹起することで、心臓や腎臓等における病態形成に重要な役割を担うことが明らかとなっている。そのため、MRの 過剰活性の抑制は、心臓や腎臓をはじめとする臓器保護に寄与すると考えられている。 フィネレノンは、in vitroにおいて、選択的にMRに結合することで、その活性化を抑制し、他のステロイドホルモン受容体 に対して影響を示さなかった。さらに、in vivoでは心臓や腎臓における炎症及び線維化を抑制し、臓器障害の進展を抑制 した。これらの特性から、フィネレノンは心血管・腎臓障害の発症や進展抑制に有用と考えられた。 慢性腎臓病(CKD)は腎障害や腎機能の低下が持続する疾患で、近年は糖尿病を起因とする透析導入が増加の一途を たどっている。また、CKDは心血管疾患の増加とも関連し、腎不全に至るまでの経過中に死亡に至るリスクが高いこと も知られている。糖尿病を合併するCKDにおいては、血行動態、代謝、炎症及び線維化が、心血管・腎臓障害の発症や 進展に関与すると考えられている。しかしながら、これら疾患に対する既存治療は、主に血行動態又は代謝への作用を 標的としており、炎症及び線維化を標的とするフィネレノンは、新たな治療選択肢となりうると考えられた。 ケレンディア錠の臨床開発は、国内外での第Ⅰ相及び第Ⅱ相試験を経て、明らかな民族差がないと判断されたことから、 第Ⅲ相試験は日本も参加する国際共同試験を実施した。標準治療として最大忍容量のACE阻害薬又はARBを投与中の 2型糖尿病合併CKD患者を対象とし、本剤を上乗せした際の腎臓病の進展抑制及び心血管疾患の発症抑制効果を検討 することを目的に、FIDELIO-DKD(試験16244)及びFIGARO-DKD(試験17530)の2試験を実施した。その結果、 米国ではFIDELIO-DKDの成績に基づき、2021年7月に世界で初めて承認を取得した。本邦ではFIDELIO-DKD及び FIGARO-DKDの成績に基づき、2022年3月に「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 ただし、末期腎不全又は透析施行中 の患者を除く」の効能又は効果にて承認を取得した
効能又は効果

2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く

 

用法及び用量

 通常、成人にはフィネレノンとして以下の用量を1日1回経口投与する。 eGFRが60mL/min/1.73m2以上:20mg eGFRが60mL/min/1.73m2未満:10mgから投与を開始し、血清カリウム値、eGFRに応じて、投与開始から 4週間後を目安に20mgへ増量する。

 

作用機序
 フィネレノンは、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)です。化学構造中にステロイド骨格を 有さず、選択的にミネラルコルチコイド受容体(MR)に結合することで、MRの過剰活性化を抑制します。 MRは腎臓の尿細管等の上皮組織の他、腎臓の糸球体、心臓や血管等全身に広く発現しています。MRの活性化には、レニンアンジオテンシン-アルドステロン系の最終産物であるアルドステロンに加え、慢性的な高血糖状態や食塩過剰摂取等の 病態下において、Rac1等の因子が直接MRの活性化に関与し、MRを過剰活性化させることで電解質調節障害や様々 な組織において炎症及び線維化を引き起こします。 慢性腎臓病(CKD)等の腎疾患や心血管疾患の進行過程では、慢性的なMRの過剰活性化が炎症及び線維化を促進し、 腎臓では糸球体障害やポドサイト障害、尿細管間質線維化等、心臓では心肥大、心筋線維化等の臓器障害の一因となる ことが報告されています。 フィネレノンは臓器障害モデル動物において、炎症及び線維化を抑制し、腎臓の機能障害の軽減や、腎肥大ならびに タンパク尿の発現抑制、心臓に対しては心肥大や心筋線維化等の抑制効果を示しました。これらのことから、フィネレノン は炎症及び線維化等を引き起こすMRの過剰活性化を抑制することで、心血管・腎臓障害の発症や進展抑制に寄与する と考えられます。

 

まとめ

ケレンディアはこんな薬です。
・2型糖尿病を合併する慢性腎臓病を対象とする初のMR受容体遮断薬
(アルドステロン拮抗薬)
・尿細管および腎・心臓のMR受容体を遮断することで、
 慢性腎臓病の進行を抑制する
・選択性が高いので副作用の軽減が期待できる。
・高カリウム血症には特に注意が必要。

 

2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の治療薬はまだまだ少ないので、新たな治療選択薬としてケレンデイアが登場したことは朗報だと思います。

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