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「オスタバロ~骨粗鬆症治療剤~」の勉強会をしました。

2023.10.06

「オスタバロ~骨粗鬆症治療剤~」の勉強会をしました。

令和5年9月26日 @はな薬局 HO

 
商品名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg
有効成分:アバロパラチド
効能又は効果:骨折の危険性の高い骨粗鬆症
用法及び用量:通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射する。なお、本剤の投与は18ヵ月間までとすること。
取扱い上の注意:本剤の使用開始後も冷蔵庫(2~8℃)に凍結を避けて保存すること。本剤は使用開始後14日以内に使用し、残った場合は廃棄すること。
(※因みに冷蔵庫保管されず所定の時間以上放置されると電動式注入器が冷蔵庫保管を促すディスプレイの表示と通知音でお知らせする機能がに備わっている。)

 
《骨粗鬆症》
 骨の代謝バランスが崩れ、骨形成よりも骨吸収が上回り、骨がもろくなった状態。
→骨は常にリモデリングという骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収を繰り返して常に新しい組織の更新を行っている。通常は骨吸収と骨形成のバランスは保たれているが、閉経後の女性やカルシウム・ビタミンD等の摂取不足、運動不足等の要因により骨吸収が骨形成を上回った状態が続いてしまい、骨量が減少する。その結果、骨強度が低下し容易に骨折しやすくなる。

 

《作用機序》
 アバロパラチドはヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質のN末端から34個のアミノ酸配列の一部を改変したポリペプチド。アバロパラチドは主に骨芽細胞に発現するPTH/PTHrP受容体に結合し、細胞内cAMP濃度の上昇等の作用を介して骨芽細胞の増殖や分化促進を引き起こす。その結果、骨石灰化・骨形成を促進する。
また、破骨細胞分化因子(RANKL等)の発現を促進し、骨芽細胞を介して破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を促進する。その結果、破骨細胞による骨吸収を間接的に促進する。アバロパラチドは、1日1回の皮下投与では骨形成促進作用が骨吸収促進作用を上回るため、骨量が増加する。アバロパラチドは、PTH/PTHrP受容体の活性型構造であるRG型及びR0型のうち、RG型構造に対する結合選択性や、cAMP産生作用がテリパラチドとは異なることが報告されている。

 

(インタビューフォームではアバロパラチドは、1日一回皮下投与の様に、間歇的に投与すると骨形成促進作用が骨吸収促進作用を上回るため、骨量が増加するとの記載があります。
連日投与ではと思いますが、
アバロパラチドの血中動体
Tmax:約30分 T1/2:約1時間
からすると一日一回は間歇的という表現になるようです。)

 

《プラセボ群との比較》
 海外第Ⅲ相試験(ACTIVE試験)において、骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆症患者の骨形成マーカーが、アバロパラチド群でプラセボ群と比較して投与開始後1、3、6、12、18ヵ月時点で有意に高いことが示された。骨吸収マーカーは3、6、12ヵ月時点で有意に高いことが示されたが1、18ヵ月時点では有意差はなかった。また、投与開始後18ヵ月までの新規椎体骨折発生率が、アバロパラチド群でプラセボ群と比較して有意に低いことが検証され、最初の非椎体骨折発生までの期間に有意な延長が認められた。
 国内第Ⅲ相試験(ACTIVE-J試験)において、骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者の腰椎骨密度の最終時の変化率が、オスタバロ®群でプラセボ群と比較して有意に高いことが検証され、大腿骨近位部骨密度の最終時の群間差は4.26%(95%信頼区間3.27〜5.25)だった。
 海外持続性試験(ACTIVE延長試験)において、アバロパラチド投与終了後のアレンドロネートによる継続治療により、プラセボ投与終了後のアレンドロネートによる治療群と比較して、ACTIVE試験の投与開始前から投与開始後25ヵ月及び43ヵ月までの新規椎体骨折発生率が有意に低く、最初の非椎体骨折発生までの期間に有意な延長が認められた。

 

《電動式注入器》
 オスタバロは自己注射製剤で、14日間使用可能な製剤カートリッジを専用の電動式注入器(オスタバロインジェクター)に装着して注射する。治療は1日1回行い、最大で18ヵ月間まで治療を継続することが可能。
 オスタバロインジェクターは、骨粗鬆症領域では初となる電動式注入器で、高齢者でも正しい手順で正確に自己注射が出来るよう、ディスプレイに操作手順を表示する機能や、投与履歴が自動で記録され、主治医等が治療状況を確認出来る機能など、電動式注入器ならではの様々な機能が備わっている。

 

《副作用》
 重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)が報告されている。主な副作用は悪心、浮動性めまい、高カルシウム尿症(5%以上)、動悸、紅斑、高カルシウム血症、頭痛、筋痙縮、尿中カルシウム/クレアチニン比増加、無重力(1~5%未満)であった。

 

《特に注意すべき副作用とその対策》
・アナフィラキシー→蕁麻疹等の皮膚症状、腹痛や嘔吐等の消化器症状、息苦しさ等の呼吸器症状が複数の臓器に同時にあるいは急激に出現する過敏反応で、医薬品によって引き起こされる場合がある為、「皮膚の赤み」「蕁麻疹」「喉の痒み」「吐き気」「くしゃみ」「咳」「ゼーゼー」「声のかすれ」「息苦しさ」「動悸」「ふらつき」等の症状がみられた場合には投与を中止し、速やかに医療機関を受診する。(アナフィラキシーを疑う場合は、直ちに救急車で医療機関を受診する)
・急激な血圧低下→投与後に血圧低下、めまい、立ち眩み、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗等が生じることがある。本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下に伴う起立性低血圧、めまい、動悸、頻脈、意識消失や転倒等があらわれることがある。投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもある。
⇒「投与後30分程度は出来る限り安静にする」「高所での作業、自動車の運転等危険が伴う作業に従事する際は注意する」「主な症状であるめまい、立ち眩み、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗の症状があらわれた場合は症状がおさまるまで座るか横になる」

・血清カルシウム値上昇→主な症状として便秘、悪心、嘔吐、腹痛、食欲減退等がみられる。投与後4時間後を最大として、一過性の血清カルシウム値上昇がみられるが、投与翌日以降も血清カルシウム値上昇が疑われる症状が継続して認められた場合には速やかに診察を受ける。

 

《考察》
 高齢になるとちょっとした転倒でも骨折につながることがあります。骨折部位によっては立ったり歩いたりすることが困難になり、入院しなければならない場合もあります。18ヶ月間という制約はあるにせよオスタバロを使用することで骨粗鬆症の患者さんの骨折リスクが減ることが期待出来ると思います。電動式注入器は高齢者でも分かりやすく正しい手順で正確に自己注射が出来るようにアシストしてくれる為、注射の打ち間違えを防ぐことが期待出来ます。
 また、薬による治療以外でもカルシウムやビタミンD、ビタミンK、たんぱく質等が多く摂れる食事、ウォーキングなどの適度な運動をすることは骨折を予防するのに有効ですし、家での転倒を防ぐためには手すりや滑り止めを付けたり・段差を無くす・動きやすい服装にする等の方法があります。薬による治療・食事・適度な運動・転倒防止、これらを上手く組み合わせることで骨折リスクを減らし健康寿命を延ばすことでより充実した生活を送ることが出来ると考えます。
(帝人ファーマの資料によると、18ヶ月経過後にビスホスホネート製剤への切り替え後も骨密度増加及び骨折抑制効果は持続するようです)

 

オスタバロ皮下注カートリッジ 3 mg
製造販売承認申請書添付資料
2.5 臨床に関する概括評価
帝人ファーマ株式会社

 

2.5.6.2.4 ITM-058 の骨密度増加及び骨折抑制効果はビスホスホネート製剤への切り替え後も持続する。
海外 BA058-05-005 試験では、海外 BA058-05-003 試験が完了した被験者(プラセボ群及び ITM058 群)を対象に、アレンドロネートに切り替えて 24 ヵ月にわたって投与(逐次投与)し、投与開始後 43 ヵ月までの骨密度変化率及び骨折発生率を評価した。
腰椎(L1-L4)、大腿骨(Total)、及び大腿骨(Neck)の骨密度の変化率は、ITM-058 からアレンドロネートを逐次投与した群では投与開始後 43 ヵ月まで継続して増加し、すべての時点でプラセボからアレンドロネートを逐次投与した群よりも有意に高かった。[2.7.3.2.3.4.2 項]。
ITM-058 からアレンドロネートを逐次投与した群では、新規椎体骨折及び非椎体骨折、臨床骨折、主要な骨粗鬆症性骨折、及び外傷性の程度を問わない非椎体骨折の発生率は、プラセボからアレンドロネートを逐次投与した群よりも有意に低かった。
以上より、ITM-058 の骨密度増加及び骨折抑制効果はビスホスホネート製剤への切り替え後も持続することが考えられた。

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